葛布作りについて
葛の採取
葛を煮る
室入れ発酵
毎日発酵状況を確かめて良い。発酵が良いと大して臭くない。
洗い
5. 袋抜き
葛蔓を一筋、元を摘み下方へ向かってしごくと靱皮が木質部と離れる。片手で靱皮を押さえながら片手で木質部を引き抜く。靱皮は蓑虫状に手に残る。靱皮の先を摘んで引き延ばし、親指と小指で千鳥にかけ手がなにする。この時。葛の元と先を混ぜないようにする。
6. 苧洗い
手がなを解いて水に流し、頭部から尾部に向かって振り濯ぎながら洗う。きれいになった部分から手がなにし、靱皮が幾条にも割れないように注意する。
7. 苧の乾燥
石河原の上に葛苧を広げて干す。生乾きの時、元から先に向かってしごいて縮を防ぎ、苧と苧を良く振って離れさせる。
8. 葛つぐり
織り
葛布はほとんどが平織りで、用途に応じて経糸はシルク、麻、綿等を用いる。杼は葛専用のもので、そこがある舟形をしているのが特徴である。この杼に水につけ固く絞ったつぐりをいれて機にかける。おさは斜めに倒し、軽く寄せるだけであるが、トントンとたたくよりも技術を要する。葛糸は激しい操作を嫌うので、動力にかからず、昔から手機で織られる。織り終わったら機からはずし、しけとりというひげを取る作業を行う。その後、砧打ちを施し練りと照りを出す。
ワークショップ
ここで紹介した葛布の作り方の詳細はワークショップで公開しています。
毎年2回行われるワークショップにご参加ください
詳しくはここクリック
各工程の補足
採取する蔓
採取時期
葛の蔓の採取する時期は5月下旬から8月上旬ではありますが、量も、質も良い時期は7月ではないかと
思っています。ただしこの地方に限った事です。場所が違えば当然 採取時期が違うと思います
最近、蔓を選べば、9月上旬まで採取可能である事が判りました。どんな蔓が良いかは
実際見てみないと判りませんね。ワークショップなどで 詳しくはお教えいたします
発酵について
室に入れる事は発酵を促す事ですが、そのメカニズムの詳細は判っていません。ただ、発酵菌に着目したのは大井川葛布が初めてであると思います。発酵を促すのは枯草菌であると思います。イネ科の植物の葉には納豆菌、枯草菌が沢山付いています。従来納豆菌の説を取っていましたが、(納豆菌も枯れ草菌一種です)糸を曳く事がないので、枯草菌であろうと思います。発酵温度も人間の体温ぐらいがベストとなります。この枯草菌はセルロースを分解する力もあるので、この発酵によって、葛の表皮を発酵させて取るだけでなく、葛の繊維も柔らかくしてくれることが判ります。発酵菌の力で表皮をとるので、表面が痛まず、光沢のきれいな葛の糸が採れます。
発酵が順調だと 白い黴が生えます。これは枯草菌の胞子です。発酵が終わった事を示します。
室について
葛布の室は土を掘って中に藁やススキを敷き、作るとあります。これが定説になっていますが、
それは 掛川の川出幸吉商店の川出さんを 記事や研究の元としたからです。この方法は掛川市倉真地区で行われていたやり方です。長年、同じところにう室を作り、そこに発酵菌が繁殖し、慣れた室になるかと思います。皆さんが真似ると、腐敗菌が入りやすく、失敗の確率がおおきくなるようです。
大井川葛布では 土を掘りません。乾いた土もしくは砂利の上にたっぷりとススキをのせて作ります。
この方法はススキを刈り取るのが面倒ですが、失敗も少なく、初心者にはお勧めの方法です。
この室作りは 日坂の宿(現在掛川市)の方法で、桑高たま さんに教えていただきました。
他にも、石室、田んぼに埋め込むなどいろいろな室作りがありました。
水について
葛の洗いは川で行いますが 、水質が重要になります。水道水などで洗うとてきめんに光沢がなくなります。大井川葛布では良き水質を求めて、ここ十年3度洗い場を換えました。それだけ水質汚染が進んでいる事を実感します。
とぎ汁について
従来、葛布を作るとき、葛の苧をとぎ汁につける事をしました。それをする事によって、苧を白くすることが出来ます。しかし、大井川葛布では、繊維の選択をしっかりすれば、とぎ汁で漂白する事はないと考えています。とぎ汁で漂白すると、脂分も落ち、強度が弱くなる、光沢が損なわれる、経年の変化が進みやすい、と考えています。良い繊維を選べば光沢のある葛布ができると思います。
筬打ちについて
葛布の筬打ちは 葛の平糸を掬うように打ち込みます。そうする事によって、葛の繊維の平たい部分がつぶれずに打ち込めます。が、掬う事によって糸がうまく打ち込めません。技術が問われるところです。
つぐりについて
ツグリを使う織物は 葛布の他に、八重山上布、芭蕉布など。ただし、みな繭型に作り、糸端を
中から出します。そうする事によって、糸が出るときに少し撚りがかかります。葛布のつぐりはキュウリ状に作り、横から糸を出します。そのため撚りがかかりにくく、平糸のまま 出てきます。
織り機について
葛布機は経を水平に張っていません。男巻き側が低いのです。
筬框は軽く、筬引きで平行を出します。どれも葛糸の平を出す工夫であります。